四つのテストThe 4-way TEST
―言行はこれに照らしてから―Of things we think,say or do
- 真実か どうかIs it the TRUTH ?
- みんなに公平かIs it FAIR to all concerned ?
- 好意と友情を深めるかWill it build GOODWILL and BETTER FRIENDSHIPS?
- みんなのためになるか どうかWill it be BENEFICIAL to all concerned ?
標準邦訳の問題点
- 標題の”Four-way”はハイフンで繋がれた単数語であり、”Test”も複数語になっていません。『The Four-way Test』は、4項目に対する試験ではなく、四方から眺めて判断すべしとの意味なのです。4つで一組であり、4項目の内、3つ出来たら75点と言うのではなく、4項目すべてに合格しなければパスしません。全部を一括しての自称自戒なのです。
- “of the things we think, say or do “という前文は1956年まではありませんでした。又前文の訳に「言行はこれに照らしてから」とありますが、”think”の訳語が抜けているのでは?テーラーは、自叙伝の中で「言行の前には、必ず、心の中の考えこそ最も大切である」「考えていることは、知らず知らずの中に、必ず、行動に出てしまうものである」と解説しておられますが、”think”の言葉を抜いては、最も大切な過程である「先ず、考えてから」が日本語訳から抜けたことになるのではないでしょうか。
- 第1項の「真実かどうか」では、「事実か」ということと「真実か」ということの違いを認識する必要があります。「事実」というのは物理的判定であり、「真実」というのは人間の心を通し厳重に判定した結果であると思います。
- “to all concern”が簡単に「みんな」とアッサリ訳されて、肝心の”concern”をわざわざ抜いて訳されています。「かかわりのある、利害関係のある」を省略した翻訳です。ただ、「みんな」でよいなら、英語でも”to all “でことが足ります。この”concern”と言う言葉は、第2句と第4句の双方に用いてありますが、「みんな」という不特定多数(一般市民とか全人類とか)を指すことになると、対象者が漠然となり、時として、物事の判断・物差しの役目を果たすのに不十分ではないでしょうか。
- 「公平」と”FAIR”とは、同じではありません。「公平」が、原語の”FAIR”の意味するところを正しく伝えているかどうかが問題です。「公平」は、依怙贔屓のないいずれにも偏らないことですが、分配の形容となり、”FAIR”はもう少し広い意味があるのではないでしょうか。公明正大・正々堂々、あるいは、清らかで正しいという意味が強いのでは……。
- 「好意を深める」と言う言葉についても議論があります。”build GOODWILL”とは自ら発する善意であり、相手方が当方に対して持つ思いやりの心は「厚意」です。”build GOODWILL”は、親愛感を示す表現の好意と言うよりも、自分の好意が善意の現れになっているかと自身で確かめること。そして、その結果が友情を深めることに繋がるだろうかと自問することだと思います。
参考文献:「四つのテスト」特集号(1998.9.17 刈谷RC週報)
(文責・・2640地区ガバナー 成川守彦)
RJW(Rotary Japan Web)から転載許可済
制定の経過と解釈
四つのテスト制定の経過
包装済食品戸別訪問販売の職業分類でシカゴ・クラブの会員であったハーバート・テーラーは、1931年に、世界大恐慌のあおりを受けて、莫大な借金のために倒産の危機に瀕していたクラブ・アルミニウム社の経営を引き受けることになりました。
もしも、会社の再建に失敗すれば、250人の従業員が仕事を失うことになります。彼はこの状況から脱出して、会社を再建するためには、道徳的、倫理的な指標がどうしても必要だと考えました。従業員が正しい考え方を持って正しい行動をすれば、会社全体の信用が高まるに違いありません。社員全体が簡単に憶えられて、自分を取り巻く全ての人たちに対して、考えたり、言ったり、行動したりするときに応用できる、道徳的な指標が必要であることに気づいたのです。社長室の机の前で頭をかかえながら、思い浮かんだ24語の言葉を書き留めたのがこの四つのテストです。
ハーバート・テーラーが四つのテストを考え出してまもなく、早速それを使う機会が訪れました。「世界で最高の調理器具」というキャッチ・フレーズが書かれた印刷物の校正刷りが、彼の机に届いたのです。
「世界で最高だということを証明することはできないし、それは間違いかもしれません。」彼は広告担当のマネジャーを呼んで、最高という文字を削除し、それ以来「最もよい」とか「最も見事な」のような単語を使うことをやめて、単に製品についての事実を述べることにしました。
さらに、それぞれ宗派の違う四人の責任者を呼んで、四つのテストが、信仰の教義に反しないことを確かめた上で、このテストを暗記し、職場で適用することを全従業員に了解させました。従業員たちは印刷された文章を手にして、それを勉強し、従業員全体の単純で効果的で興味をそそる信条にしたのです。
その後まもなく、取引先の印刷所が見積もりを間違えるという事件が起こりました。印刷所は、品物を届けてしまった後に、500ドル安く見積りしたことに気づいて、半ばあきらめながらも、その事実を会社に告げました。法的にも社会通念上からも、その訴えを退けることは可能でしたが、四つのテストの[みんなに公平か?]に抵触するという意見に従って、500ドルを上乗せして支払うことにしました。
高い道徳的水準に基づいた真摯な会社経営は、消費者の信用につながって、クラブ・アルミニウム社は売上を伸ばし、5年後にはその借金は利子と共に完済し、15年後には株主に多額の配当をするまでに業績を伸ばしました。
シカゴ・クラブが四つのテストの存在を知ったのは、1939年にハーバート・テーラーが商工会議所の会合でこの話を披露したのを、たまたまゲストとして参加した他の会員が聞いたことに始まります。ハーバート・テーラーは1939-40年にクラブの会長、1954-55年に国際ロータリーの会長を務め、その際この四つのテストの版権をRIに寄付し、今日に至っています。
四つのテストは各国語に訳されて、ロータリー・ライフはもちろんのこと、社会的、政治的な問題や、人間の生活に影響を与えるすべての人間関係に驚くべき成果を与えつつ、適用されているのです。
(文責・・パストガバナー 田中 毅)
四つのテストの解釈
四つのテストの和訳は、1954年に、全国のクラブに日本語訳の応募を働きかけた結果、70数件の応募が寄せられ、本田親男(東京クラブ)の応募訳が”当選原案”として採択されました。標題については、手島知健パストガバナーが、応募案の中で1番多い用語である《四つのテスト》を選ばれて現在の”標準邦訳”になりました。
この日本語訳については、問題がありますので、出来れば同時に英文を読むほうがその真意を理解できます。「4-way」の訳も、小中パストガバナーは「どんな場合にも適応しうる」と訳され、物事を言い、行う場合の判断基準であると述べられています。塚本パストガバナーはハーバート・テーラーから直接「四つ辻に来たとき、立ち止まって、どの道が正しく、どちらが間違った道であるかを考える」ことであると聞いたということです。